平成19年度日本コンクリート工学協会北海道支部優秀学生賞の表彰

平成20年5月13日に行われた北海道支部総会の会場で、表彰式が行われ次の3名が表彰されました。 初めに、優秀学生賞授賞審査委員会委員長代理の橋義裕氏から選考経過・審査方法について説明があり、表彰理由が紹介されました。 引き続き田畑雅幸支部長から一人一人に表彰状と賞品(図書カード)が授与されました。 また、副賞としてJCI会員資格1年分が授与されます。

平成19年度JCI北海道支部優秀学生賞授賞審査委員会
委員長 菅田紀之

選考経過

平成19年度JCI北海道支部優秀学生賞として修士論文4編,卒業論文1編の応募がありました。
平成20年3月21日に,平成19年度JCI北海道支部優秀学生賞授賞審査委員会を開催し,選考方針を次のように定めた。

選考方法

  1. JCI「コンクリート工学年次論文集」論文審査要領の採否の判定基準に準じて定めた「新規・独創性」,「発展性」,「有用性・実用性」, 「完成度(理解度)」,「成果・現象解明」の5項目について,提出された論文概要を評価(各項目3段階評価,評価点0, 1, 2)する。
  2. 委員5名による評価点の合計が30点以上(50点満点)の論文を候補とする。ただし,候補対象論文が多数の場合には上位3位までとする。

優秀学生賞候補

委員会として慎重審査の結果,優秀学生賞候補として次の3編を推薦する。

1. フライアッシュを用いたモルタル・コンクリートの自己修復効果に関する研究
藤原 佑美 ふじわら ゆみ (室工大大学院修了) 推薦者 濱 幸雄
2. 寒冷地環境におけるセメント系ひび割れ注入剤の強度特性に関する研究
藤本 拓也 ふじもと たくや (北大大学院修了) 推薦者 大沼博志
3. アンボンドPC鋼材を用いたPCa圧着梁部材の復元力特性モデルに関する研究
小林正仁 こばやし まさひと (北大大学院修了) 推薦者 上田正生

推薦理由

1.フライアッシュを用いたモルタル・コンクリートの自己修復効果に関する研究 藤原 佑美

(理由)
コンクリートに関しては高強度化することにより劣化作用を抑制し,耐久性向上を目指してきたが,供用期間中に生じるマイクロクラックが耐凍害性の低下や中性化促進の原因になっている。当該論文は,鉱物組成を調整したセメントとフライアッシュを適切に配合することで長期間計画的に反応を起こし,供用期間中に生じた微細ひび割れを反応生成物で埋める自己修復コンクリートに関するものである。論文では,フライアッシュを外割り混入したコンクリートの耐凍害性の検討およびフライアッシュを混入したモルタル・コンクリートの自己修復効果の検討を行い,高温の十分な修復養生条件下でフライアッシュの高い自己修復性能を確認している。また,劣化と修復のバランスを表す自己修復効果の評価指標を示している。 当該論文は,コンクリートの耐久性向上を自己修復という面から検討したものであり,今後の更なる発展が期待される。 以上より,平成19年度JCI北海道支部優秀学生賞候補として推薦する。

2.寒冷地環境におけるセメント系ひび割れ注入剤の強度特性に関する研究  藤本 拓也

(理由)
コンクリート構造物では供用期間が長期化したものが増加しており,21世紀は新設から維持管理・補修の時代に移行してきている。そのため,ひび割れ発生の原因究明や抑制対策とともに,ひび割れ発生後の補修がこれまで以上に重要な課題となっている。ひび割れの補修には被覆工法・注入工法・充填工法などがあるが,当該論文は既設コンクリートとの一体化が期待できるセメント系の注入工法を研究対象としている。論文では,注入剤の強度特性のうち,既設コンクリートとの一体化を評価する上で最も重要な特性である接着強度特性について検討を行い,低温環境および湿潤条件下の強度特性を解明している。 当該論文は,実施工環境を考慮したひび割れ補修のための注入工法の接着強度特性を明らかにしたものであり,本注入工法の実施工への応用が期待される。 以上より,平成19年度JCI北海道支部優秀学生賞候補として推薦する。

3.アンボンドPC鋼材を用いたPCa圧着梁部材の復元力特性モデルに関する研究  小林正仁

(理由)
アンボンドPC鋼材を用いたPCa部材に関する簡便な復元力特性モデルは,ボンドタイプの部材を基本としたものが幾つか提案されているが,アンボンドPC鋼材のみで圧着接合されたPCaPC部材を対象とできるモデルは未だ確立されていない。当該論文は,アンボンドPC鋼材のみで圧着接合されたPCaPC部材の復元力特性のモデル化に関するものである。論文では,既往のFEM解析手法を用い,せん断スパン比やコンクリート強度等をパラメータとしてパラメトリック解析を行い,復元力特性モデルの履歴経路を構成する特性点を回帰的に求めることにより,復元力特性を簡便に表現し得るモデルを開発・提案している。 当該論文は,アンボンドPC鋼材のみで圧着接合されたPCaPC部材の解析に必要な新たな復元力特性モデルを提案している。また,これに基づく新構造の復元力モデル開発も期待される。 以上より,平成19年度JCI北海道支部優秀学生賞候補として推薦する。


表彰者の決定

審査委員会の報告を受けて,平成20年4月11日に開催した役員会において協議した結果,委員会が推薦した3名に,平成19年度JCI北海道支部優秀学生賞を授与することに決定した。  表彰では,賞状の他,賞品として5,000円の図書カード,副賞としてJCI正会員1年分の資格をあたえる。

JCI北海道支部優秀学生賞授賞審査委員会
委員長 室蘭工業大学 菅田  紀之
委 員 北海道大学 北野  敦則
委 員 北海道大学 胡桃澤 清文
委 員 北海学園大学 高橋  義裕
委 員 北海道大学 長谷川 拓哉