平成18年度日本コンクリート工学協会北海道支部優秀学生賞の表彰

平成19年5月16日に行われた北海道支部総会の会場で、表彰式が行われ次の2名が表彰されました。 初めに、優秀学生賞授賞審査委員会委員長の橋義裕氏から選考経過・審査方法について説明があり、表彰理由が紹介されました。 引き続き田畑雅幸支部長から一人一人に表彰状と賞品(図書カード)が授与されました。 また、副賞としてJCI会員資格1年分が授与されます。当日は受賞者本人2名ともご都合が悪く、代理人の方が表彰式に出席されました。

平成18年度JCI北海道支部優秀学生賞授賞審査委員会
委員長 橋 義裕

選考経過

平成18年度JCI北海道支部優秀学生賞として修士論文2編の応募がありました。
平成19年3月26日に,平成18年度JCI北海道支部優秀学生賞授賞審査委員会を開催し,選考方針を検討した後,審査基準を次のように定めた。

審査基準

  1. JCI「コンクリート工学年次論文集」論文査読要領の採否の判定基準に準じて定めた「新規・独創性」,「発展性」,「有用性・実用性」, 「完成度」,「成果・現象解明」の5項目について,各項目3段階で評価(評価点0,1,2)する。
  2. 委員5名による評価点の合計が30点以上(全員が全項目を2点とした場合50点)の論文を候補とする。但し候補対象論文が多数ある場合には上位3論文とする。

優秀学生賞候補

委員会として慎重審査の結果,優秀学生賞候補として次の2編を推薦する。

1. コンクリートひび割れ面における粗さ密度関数のせん断伝達モデルへの適用
木畑 雅章 きばた  まさあき (北大大学院修了) 推薦者 上田 正生
2. エコセメントの強度発現に及ぼす水和反応の影響
蛭川 泰卓 ひるかわ やすたか (北大大学院修了) 推薦者 名和 豊春

推薦理由

1.コンクリートひび割れ面における粗さ密度関数のせん断伝達モデルへの適用 木畑 雅章

(理由)
コンクリートのせん断ひび割れ面における応力伝達作用は,ひび割れ発生後のRC部材の変形挙動を評価する上で極めて重要であり, その構成則モデルも既に幾つか提案されている。しかし,ひび割れ面形成後のせん断伝達挙動に伴う,せん断・垂直両方向の応力と 変位の相互関係を追跡した実験は極めて少なく,数値モデルそのものの正確な検証が困難な状況にある。本研究は,コンクリート せん断伝達モデルの主要パラメータである「二次元ひび割れ粗さ密度Xs関数」を初めて測定・分析し,これを既往のモデルに組み込み 修正を加えたものである。更に,自ら新たに実施した高強度コンクリートひび割れ面のせん断伝達実験結果との比較・検証を行って, パラメータとしての「二次元ひび割れ粗さ密度Xs関数」のもつ有用性を実証している。本研究はひび割れ発生後におけるRC部材の変形挙動を 評価する上で重要なひび割れ面形成後の応力伝達作用を解明する手がかりを与えるものであり,今後の更なる発展が期待される。
以上より,平成18年度JCI北海道支部優秀学生賞候補として推薦する。

2.エコセメントの強度発現に及ぼす水和反応の影響  蛭川 泰卓

(理由)
JISに制定された都市ごみ廃棄物を原料として製造されるエコセメントは,一般的なRC構造物への利用が期待されている。 しかし,エコセメントは普通ポルトランドセメントと比べて長期材齢での強度発現が小さく,これが普及を停滞させる原因となっている。 本研究は,エコセメントの長期強度発現性状の改善を目的に,エコセメントの水和反応を最新の各種手法により観察・解析を行い, 針状に成長した水酸化カルシウムが,エコセメントペーストの微細構造および強度発現に影響を及ぼすことを見出し, 強度発現のメカニズム解明に一つの指標を示している。さらに,エコセメントの一部を適量の混和材(フライアッシュおよび高炉スラグ)で 置換することにより針状水酸化カルシウムの生成を防止し,長期強度発現が改善されることを明らかにしている。このことより今後エコセメントの コンクリート構造物へ使用拡大も期待できる。
以上より,平成18年度JCI北海道支部優秀学生賞候補として推薦する。


表彰者の決定
審査委員会の報告を受けて,平成19年4月12日に開催した役員会において協議した結果,委員会が推薦した2名に,平成18年度JCI北海道支部優秀学生賞を授与することに決定した。 なお,表彰者には,賞状の他,賞品として5000円の図書カード,副賞としてJCI正会員1年分の資格を与えることとした。

JCI北海道支部優秀学生賞授賞審査委員会
委員長 北海学園大学 高橋 義裕
委 員 北海道大学 杉山 隆文
委 員 北海道工業大学 武田  寛
委 員 北海道大学 長谷川拓哉
委 員 室蘭工業大学 濱  幸雄